長雨が続く5月頃になると「梅雨」入りしましたと耳にすることが多くなります。
「梅雨前線が日本列島を…」なんて聞くと洗濯物は外に干せるだろうかとか、お出かけする日は大丈夫だろうかと心配になりますね。
なにげなく「梅雨」と書きましたが、皆さんは「梅雨」をなんと読みますか?
「沖縄から梅雨(つゆ)入りしました」とか「梅雨(ばいう)前線が…」と言っているのを耳にすることがあるでしょうから、このどちらか(あるいは両方)という方がほとんどではないでしょうか?
では皆さんはこの読み方の違いについて正しく理解されているでしょうか?
私もちょっと疑問に思ったので調べたことをまとめてみたいと思います。
「梅雨」の読み方は2通り?
「梅雨」という漢字は、小学校4年生ごろまでには習うであろう、さほど難しくない漢字です。
しかし、この漢字には2つの読み方があります。
2つの読み方をする漢字は他にもありますが、この「梅雨」という漢字も「つゆ」と「ばいう」という2つの読み方をする漢字の一つです。
「つゆ」と「ばいう」の違い
結論から言うと「つゆ」と「ばいう」は読み方が違うだけで意味に違いはありません。
同じ漢字で読み方が違うというのは、漢字では割と多くあります。
「梅雨」という漢字もそのひとつです。
では、読み方のどこに違いがあるのかというと、「つゆ」は訓読みで「ばいう」は音読みということです。
音読みと訓読みについては、以下を参考にしてみてください。
・音読み…昔の中国の発音をもとにした読みで、聞いただけでは意味がわからないものが多い。
・訓読み…漢字の意味を表す日本語の読みで、聞いただけでも意味がわかるものが多い。(引用元:ベネッセ 進研ゼミ小学講座 )
音読みはどちらかというと漢字そのものを読むという読みかたで、「梅」を「ばい」と読む場合は、一文字だけでは意味がわかりませんが、「雨」を「う」と読むと「梅雨(ばいう)」で意味が解ります。
一方、訓読みは漢字を読めば意味が解るという読み方で、「梅雨」と「つゆ」と読めば意味が解ります。
「つゆ」の由来
「つゆ」という呼び方は江戸時代の頃より呼ばれるようになったと言われています。
「つゆ」と呼ばれるようになったことについては、不明な部分が多いようですがまとめてみました。
「つゆ」と言えば「露」(つゆ)という漢字を思い出す人もいるかもしれません。
実は「梅雨」を「つゆ」と呼ぶようになったのは「露」から来ているとも言われています。
また、「梅」の実が熟す時期で「潰れる」を意味する「潰える(ついえる)」や「潰ゆ(つゆ)」から「梅雨(つゆ)となったとも言われています。
ちょっとこじつけっぽいですが、梅の実の収穫時期を忘れないようにという思いが言葉に感じられます。
「ばいう」の由来
「ばいう」という呼び方は中国からきたといわれていて、「ばいう」の読み方のほうが「つゆ」の読み方よりも古いと言われています。
「ばいう」は「梅」と「雨」と書いて「梅雨」となります。
もしかすると梅に何か関係しているのではないかと思い調べてみました。
やはり、「梅」に関係する説がありました。
・「梅」の実を収穫する時期からの由来
「梅」の実を収穫するころに降る「雨」を意識して「梅雨」とされたと言われています。
「梅」の実は6月~7月にかけて収穫されます。
丁度「つゆ」の時期と重なります。
「梅」が熟す頃には雨が降るので収穫を忘れずになどという意味もあるのでしょうか。
・「黴雨」(ばいう)という文字から「梅雨」になったという由来
「黴」は「かび」と読みます。
普段は漢字で書かないのであまり馴染みがありませんが、「つゆ」の時期はカビが発生しやすい時期です。
カビが発生する条件としては、「ジメジメ」している所にカビは発生しやすいとされています。
5月初旬ごろになると雨が降りやすく「ジメジメ」してきます。
その意味から「黴雨(ばいう)」となったと言われています。
そして、6月ごろには「梅」の実が熟します。
「黴」の時期に「雨」が降るという意味で「黴雨(ばいう)」となり、そこから音が似ている「梅」の「雨」と書いて「梅雨(ばいう)」にしたのではと言われているようです。
今考えれば、「黴雨」が「梅雨」で良かったなと思いませんか?
「黴」と「雨」の漢字だとイメージがあまりいいものではありませんしちょっと難しい漢字だし。。。
毎年少し不快な気持ちになっていたかもしれませんね。
昔の人に感謝です!
そういえば「つゆ」も「ばいう」も「梅」が関係していますね。
「梅」を食べると疲れをとったりカルシウムの吸収がよくなったりすると言われています。
身体にはよい食べ物なので、昔の人は「梅」を大切なものであると思っていたのかもしれません。
(参考:tenki.jp )
読み分け方はあるの?
「つゆ」と「ばいう」の読み方について調べてきましたが、結局、この2つを読み分ける必要があるのかということをまとめてみたいと思います。
「つゆ」と「ばいう」の違いは、音読みと訓読みであることを説明しました。
日本語の特徴ですが、音読みと訓読みで同様の意味をなすものが多くあるのをご存知でしょうか?
今回の「つゆ」と「ばいう」についても意味は変わらないが読み分ける必要があるということになります。
「梅雨」を音読みで読む場合には、音読みの言葉が付きます。
「梅雨」と「前線」で「ばいうぜんせん」となります。
「梅雨」を訓読みで読む場合には、訓読みの言葉が付きます。
「梅雨」と「入り」で「つゆいり」となります。
あえて2つの読み方に意味の違いを持たせるとしたら、私個人の認識レベルの話ではありますが、
(例:5-6月になって雨の多い時期に入った⇒梅雨入り)
・「ばいう」はその梅雨時(つゆどき)に降る雨を指すときの読み方
(例:「梅雨前線」はつゆどきの雨をもたらす前線)
ってイメージですね。
まとめ
「梅雨」には「つゆ」と「ばいう」の読み方があり、意味は同じでも使い分ける必要があるということがわかりました。
「梅」という漢字から想像すると、その季節での生活に大切なものが名付けられていたのだと改めて感じました。
他の漢字も調べてみると季節や生活に根付いた漢字が沢山あるのかもしれませんね。